GROMACS 溶媒和ΔGをGPUで回す:λ窓並列で意思決定を前倒し(A100実測→H200 NVLへ)¶
前提(ここが大事)
このページの数値は A100 80GB×4 での実測です。
販売対象の H200 NVL(1/4/8GPU) でも同じ考え方で、「λ窓(+replica/複数案件)を並列化して、壁時計を短縮」できます。
H200 NVL向けには、お客様の系・条件に合わせて PoCで実測値を提示します。
結論(先に要点)¶
- 同じΔGを再現:A100とH100で溶媒和ΔGは誤差内で一致(計算として妥当)
- A100→H100で壁時計短縮:4GPU並列の完了時間が 約23%短縮(1.30×高速)
- 膜系(benchMEM)でもthroughputが伸びる:H100 NVL×4で 合計934 ns/day(1GPU比3.51×)
まず何を計算しているか¶
ここでやっているのは、GROMACSで 「エタノールが水に“なじむ強さ”」を数値で出す計算です。
- エタノールが水に溶けやすいのは感覚的に分かりますが、
- その “溶けやすさ” を 自由エネルギー ΔG(デルタジー) という数値で表します。
ざっくり言うと:
- ΔGがマイナス → 水に入るのが「自然」=溶けやすい
- ΔGがプラス → 水に入るのが「不自然」=溶けにくい
この「溶媒和ΔG」は、創薬でよく使う 結合自由エネルギー(ABFE/RBFE)の“部品”でもあります。
だから企業向けには「単なるお遊び」ではなく、将来の本命計算(候補評価)につながるミニデモとして使えます。
なぜGPUが効くの?(λ窓=独立ジョブ だから)¶
自由エネルギー計算は、いきなり0→1を一発で変えるのではなく、途中をいくつかに分けて少しずつ変化させます。
この「分割した1個1個」を λ(ラムダ)窓と呼びます。
- 今回は 7つのλ窓(0.0 / 0.2 / 0.4 / 0.6 / 0.8 / 0.9 / 1.0)
- 各λ窓は 基本的に独立しているので、別々に計算できます
つまり、
- 1GPUしかない場合:7窓を 順番に回す(遅い)
- 4GPUある場合:7窓を 同時に回せる(速い)
この “同時に回せる” が、企業の意思決定(結果が出るまでの待ち時間)に直結します。
実測環境¶
- GPU:NVIDIA A100 80GB(PCIe)×4
- 計算:2 ns / 窓 × 7窓(合計 14 ns分のサンプリング)
- 統合:BAR(後半1 nsのみ使用、
-b 1000 ps)
- ソフトウェア:NGCコンテナ
nvcr.io/hpc/gromacs:2022.3(Apptainer)
結果:ΔG(エタノールの溶媒和自由エネルギー)¶
- ΔG_total = -17.49 ± 0.36 kJ/mol
- ΔG_total = -4.18 ± 0.09 kcal/mol
(ΔGがマイナスなので、エタノールは水に“なじむ”=溶けやすい、という直感と一致します)
結果:壁時計(意思決定の速さ)¶
今回のポイントは 「同じ答え(ΔG)に到達するまでの時間がどれだけ短くなるか」です。
| 実行方法 | 壁時計(7窓を完了するまで) |
|---|---|
| 1GPU逐次(1窓ずつ順番) | 1044.15 sec(17.40 min) |
| 4GPU並列(窓を同時に実行) | 364.10 sec(6.07 min) |
- 短縮(壁時計)= 2.87×
- 参考:7窓を4GPUで回す理想上限は 3.50×(2バッチで終わるため)
→ 今回は 理想比 81.9% と良好
仕事では何が変わる?(待ち時間と処理件数)¶
企業側で稟議に乗せやすい言い方は「論文が増える」よりも、次の2つです。
1) 待ち時間が減る(Time-to-decision)¶
- “結果が出るまで待つ時間” が短くなる
→ 次の候補に進む意思決定が前倒しできる
2) 週あたり処理できる件数が増える(スループット)¶
自由エネルギー計算の実務では、多くの場合 - λ窓を増やす - replica(反復)を増やす - 候補分子を複数同時に回す が必要になります。
GPUを増やすと 同時に回せる本数(窓×replica×案件)が増えるため、 「同じ期間で評価できる候補数」が増えます。
A100×4 vs H100 NVL×4(実測比較)¶
同一ワークロード(2 ns/窓 × 7窓、BARは後半1ns)を、A100とH100で実測比較しました。
(GROMACSは NGCコンテナ nvcr.io/hpc/gromacs:2022.3 をApptainerで使用)
※図の縦軸は概算スケールです。正確な数値は次の表を参照してください。
壁時計(意思決定の速さ)¶
| GPU構成 | 4GPU並列(7窓を同時実行) | 1GPU逐次(7窓を順番に実行) | 並列Speedup(理想3.5×) |
|---|---|---|---|
| A100 80GB×4 | 364.10 sec(6.07 min) | 1044.15 sec(17.40 min) | 2.87×(効率81.9%) |
| H100 NVL×4 | 279.40 sec(4.66 min) | 922.45 sec(15.37 min) | 3.30×(効率94.3%) |
- A100→H100(4GPU並列)の短縮:6.07分 → 4.66分(約23%短縮、1.30×高速)
- H100は「7窓を4GPUで回す」理想上限(3.5×)に対して 94% と良好(窓並列がよく効く)。
ΔG(計算の妥当性チェック)¶
- A100:ΔG_total = -17.49 ± 0.36 kJ/mol
- H100:ΔG_total = -17.97 ± 0.92 kJ/mol
→ 誤差内で一致し、同一手順がH100でも再現できています。
膜系ベンチ(A相当):benchMEM(膜タンパク+膜+水)をH100 NVL×4で測る¶
「膜系のGROMACS」を使う方に近い題材として、ベンチマーク benchMEM を測りました。
このタイプは現場では 条件違い・replica・複数案件を同時に流すことが多く、H100/H200 NVLの価値(スループット)を説明しやすいです。
測定条件(短時間で再現しやすい設定)¶
- nsteps = 200000(約0.4ns相当)
- OMP = 8
- ソフトウェア:NGCコンテナ
nvcr.io/hpc/gromacs:2022.3(Apptainer) - 環境(H100側):Driver 550.144.03 / CUDA 12.4
- トポロジ(要点):GPU0–1 が NVLink(NV12)+NUMA0、GPU2–3 が NVLink(NV12)+NUMA1
結果(H100 NVL×4 実測)¶
| 実行 | throughput (ns/day) | wall(目安) |
|---|---|---|
| 1GPU(GPU0) | 266.124 | 136.48 sec |
| 4GPU(4本同時の合計) | 934.433 | 165.21 sec(4本の最大wall) |
- 4GPU/1GPU のスループット倍率:3.51×(= 934.433 / 266.124)
- 4GPU内訳(ns/day):g0=245.874 / g1=236.474 / g2=223.791 / g3=228.294
ここがポイント:同時に何本回せるか¶
「1本を最速で回す」だけでなく、“同時に何本回せるか”が実務価値です。
H200 NVL 8GPU なら、replicaや案件の同時実行で スループットをさらに上げて、意思決定を前倒しできます。
H200 NVL(1/4/8GPU)で何が変わる?¶
- 4GPU:今回と同じ “窓並列” がそのまま効く(壁時計短縮)
- 8GPU:7窓の計算だけだとGPUが1枚余るので、実務では
- もう1案件を同時に流す(スループット増)
- replicaを増やして誤差を下げる(精度↑でも日程を伸ばさない)
で真価が出ます
相談(PoC)¶
H200 NVL(1/4/8GPU)で、あなたの条件(候補数、λ窓数、replica数、締切)に合わせて
「週あたり何件処理できるか」「壁時計がどれだけ短くなるか」をPoCで実測提示します。
→ お問い合わせ